住宅照明の種類と特徴、快適な色とは?
住まいの快適性に関わる「照明計画」。自分に合った照明プランであれば生活の質を上げることができますが、自分に合わないものだと後悔の原因になってしまいます。「自分にとって住み心地の良い照明プランがどんなものか」を知るには、まず基本の考え方を押さえることが大切です。ここでは照明の「種類・特徴」をご紹介した上で「照明の色と過ごしやすさの関係」など、照明選びのヒントになるものを深堀していきます。
目次
1.照明器具の種類と特徴
. 1-1.シーリングライト
. 1-2.ダウンライト
. 1-3.シーリングダウンライト(ダウンシーリング)
. 1-4.ペンダントライト
. 1-5.ブラケット
. 1-6.スポットライト
. 1-7.足元灯
. 1-8.その他
2.照明の色と過ごしやすさ
. 2-1.代表的な光色(電球色、温白色、昼白色)
. 2-2.「光の色×明るさ」で変わる過ごしやすさ
. 2-3.時間帯・活動別のおすすめ光色
3.まとめ
一口に照明器具といっても器具の形からランプの種類まで多種多様なものがございます。ここでは住宅で一般的に使用されている照明器具の種類と特徴についてご紹介します。
天井に直接取り付けて空間全体を均一に照らす照明器具です。商品の説明欄に「○畳用」と目安が書かれていることが多く、購入の際にも分かりやすくなっています。
たまに「一つ上の畳数の方が良いの?」と聞かれますが、ワンサイズ上の明るさ・調光タイプでの計画がおすすめです。
例えば「お部屋の大きな面積を占めるパーツ(壁・カーテン・床・ラグなど)が暗色(床ならウォルナットなど)の場合」は同じ畳数でも明るさ感が抑えられてしまいます。インテリアは住みながら変えていくこともあるかもしれません。住みながら必要に応じて明るさを絞って節電するのはいかがでしょうか。
また加齢に伴って人間の目は「黄色フィルターがかかって見える」ように変化していきます。高齢者は若年者の1.5倍の明るさが必要、特に視作業(読書など)の場合は2倍の明るさが必要といわれています。このため今の自分にピッタリな計画とするよりはワンサイズ上の照明・調光を上手に活用しながら使用していくことをおすすめいたします。
天井に埋め込む器具で開口が小型の照明器具です。照明器具が天井から出っ張らないため、器具の存在を感じさせずに空間を明るくすることができます。ダウンライトにも種類があり「コーン型(拡散タイプ)、ピンスポット型(集光タイプ)、バッフル型(まぶしさ低減タイプ)、ウォールウォッシャー型(壁面照射タイプ)」など器具によって異なった光の出方をするため、用途によって使い分けが必要です。
天井に直接取り付けるタイプの照明器具で、ダウンライトのような小型のサイズ感のものをいいます。ダウンライトと違い天井から出っ張りますが、天井をすっきり見せることのできる出っ張り高さ3~3.5㎝の薄型タイプもあります。高気密・高断熱住宅の施工に適しているのが特徴です。
天井からコードなどで吊り下げる照明器具です。ペンダントライトのうち多灯で装飾性の強いものを特にシャンデリアと呼びます。ペンダントライトはダイニングテーブルやキッチンカウンターの上部にスポット使いすることが多く、シャンデリアは吹き抜けやリビングなどの空間全体を照らす場合に使用されます。
壁に直接取り付ける照明器具です。壁から出っ張らせて設置するため、照明周りの動線や取付け高さに注意が必要です。「上向き・下向き・上下タイプ」「灯具の透過有無」などにより光の見え方が変わるため、使用場所と照明タイプの組み合わせに配慮が必要です。
特定の箇所に集中的に光を照射するための照明器具です。天井や壁に直付けするタイプと、ライティングレールに取付けて位置調整ができるタイプがあります。吹き抜けや高天井など、天井面からのライティングだけでは明るさが不足するときの補填にも用います。
廊下や階段の足元部分を照らすための照明器具です。壁面下部や階段の蹴込などに埋め込んで設置します。壁面設置タイプでは「コンセント一体型になっている器具」や「ランプ部分だけ保安灯として取り外して使用できる器具」もあります。
スタンド
置き型照明器具のことをいいます。床に置く「フロアスタンド」と、デスクなど卓上に置く「テーブルスタンド」があります。近くにコンセントがあることが設置条件です。床からの立ち上り部分がないものは「フロアランプ」と呼ばれています。最近は球体のフロアランプでもリーズナブルなものが出てきました。模様替え感覚で取り入れやすい照明器具です。
建築化照明
光源(ランプ)を壁や天井などの躯体中に隠して設置し建物と一体化した照明のことをいいます。光の出る向きによって「コーブ照明」「コーニス照明」「バランス照明」などの種類があり、いずれも間接光独特の柔らかい雰囲気を演出することができます。建築化照明を美しく取り入れるためには間取り段階での同時検討が必須です。
空間のイメージを左右する光色。過ごしたい空間に合わせて色を選ぶために、照明の「色」について知っておきましょう。
照明には代表的な3つの色があります。
画像出典:よくばりシリーズ | 製品情報 | LED・製品情報 | 大光電機株式会社
電球色(2700K)
暖かみのあるオレンジっぽい色をした明かりです。「ゆったりしたくつろぎ空間」を好まれる方に最適です。
昼白色(5000K)
太陽の下にいるような、爽やかな活気のある白っぽい明かりです。何かしらの「作業をする場所」や「明るさを重視したい部屋」におすすめです。
温白色(3500K)
電球色と昼白色の中間の明かりです。「明るさと暖かみを両立したい」場合や「強い光は目が痛くなるから苦手」という方の作業部屋照明にも向いています。
もちろん上記以外の色の照明器具もございます。
商品説明に色名で記載のないときは「色温度(K:ケルビン)」でどんな色かを判断します。色温度では「(ろうそくの炎のような)赤みのある色ほど数値が低く」「青みがかった(青空のような)色ほど数値が高く」表現されています。
例えばデスクライトを選ぶときは「昼光色(6200K)」に近い光色の商品にすると文字が読みやすく、読書や勉強を快適に行うことができます。
「光の色と明るさ度合」には快適に感じるための法則が存在します。
人間はずっと太陽と一緒に暮らしてきました(いきなり壮大なお話を始めます)。何百年、何千年と太陽と暮らしてきたので、人間の身体は「太陽の光と似ている光を快適」に感じ「いつもの太陽と異なる光を不快」に感じるようにできています。
これにより
「色温度の低い(赤っぽい)色 × 低照度(暗い)」
「色温度の高い(青白っぽい)色 × 高照度(明るい)」
の組み合わせは「朝焼け・夕焼けどきの太陽」「晴れた日の昼間の太陽」と認識されて快適に感じます。反対に通常の太陽でない組み合わせは
「赤っぽい × 明るい」 → 暑苦しい・違和感 (異常気象の赤い空)
「白っぽい × 暗い」 → 寒々しい・陰気 (天候悪化時の空)
というように、不快感を伴います。
例えば廊下などに「電球色照明を採用」する場合、「過剰に設置すると暑苦しく感じる」ので灯数は必要最低限に。「少し暗いな」くらいでもいいかもしれません。居室を「昼白色ベースで計画」するなら、「少し多めかな」くらいの灯数にしておくことをおすすめします。
もっとも居室は、キッチンなどの「作業の決まったスペース」でない限り、調色機能付きの照明器具をおすすめします。子供部屋などは「作業(勉強・遊び)」と「くつろぎ(夜寝る前)」を両立したいので調色機能付きだと嬉しいところ。(新築時点で予算がきつければ、配線と口だけつけておいて、照明器具は入居後購入もありだと思います。)
LDKは意外と夜点灯がメインだという生活スタイルや間取りの方もいらっしゃるので、単色でくつろぎ重視にしても良いかもしれません。昼間に在宅ワークでLDKを作業利用する方は調光調色機能付きを強くおすすめします(もちろん予算がゆるせばですが・・・)。
「食事をする」「勉強をする」など活動シーンにはそれぞれに最適な光色と明るさのバランスが存在します。「快適だと感じる光色と明るさ」をしっかりと選択することがポイントです。日勤生活の場合を例にご紹介します(夜勤の場合は12時間ずらして考えていただけると幸いです)。
起床時
「昼白色×高照度」で一気に脳みそを目覚めさせます。特に冬場は日の出時間が遅くなるため、意識的に光を浴びて「朝」だと自覚させましょう。
(寝室はゆったりしたいから温白色・電球色の照明にしたけど、調光機能がない!という方はスマートフォンのブルーライトをMaxにして浴びましょう。)(起床時間に合わせて徐々に明るくなる照明器具もございます。この照明だと朝が弱い方にも負担が少ない起こし方をしてくれます。おすすめです。)
活動時間
一般作業は「昼白色(5000K)×高照度」が快適です。服選びや化粧など「色を判断するような作業」にも向いています。
細かい作業には「昼光色(6200K)×高照度」がおすすめです。昼光色は昼白色よりも青白い光で、文字が読みやすく読書や勉強に最適です。(スタンドライトの商品説明で6000K前後の数字が入っていたら「見やすくなるのだな」と思ってもらって大丈夫です。)
夕方~夕食時
就寝に向けて少しずつ照度を落としていきたい頃。「温白色(3500K)×中照度」ならご飯の色が分かりつつ、くつろいで団らんするのに丁度よい照度になります。ただし「ご高齢の方だけでの夕食なら昼白色のまま」が食卓の色が見やすくおすすめ。高齢の方の目には「温白色」が「電球色」くらいに見えているためです。
夕食後~就寝前
夜の落ち着いた時間を楽しむなら「電球色(2700K)×低照度」がおすすめです。そうはいっても「日中に出来ない家事が残っているよ!」という方もいらっしゃるでしょう。洗濯機を回したり、掃除したり、家事は「温白色」の照明で行い、就寝1時間前くらいから「電球色」で目を休めながら眠りに備えましょう(睡眠の質が向上します)。
これをするには全般照明(部屋全体を照らすための照明)への調光調色機能採用が欠かせません。快適さを求めるならLDK、寝室、子供室は調光調色付の照明を検討してもよいのではないでしょうか。もっと言えば、明るさに連動して快適な光色に切り替えてくれるタイプの照明器具がおすすめです。面倒くさいことは1つでも減らしたいという方にはぜひ採用していただきたい。値段はしますが、入れる価値はあると感じています。
照明の基本として照明器具の種類と特徴、快適に過ごせる色味などをご説明しました。
しかし最後は「個人の好み」が最優先です。上記で説明した考え方の大枠は変わりませんが、人間の「快適感」は個人の体質・年齢による変化でどうしてもばらつきます。(基本の考え方を押さえつつ「自分は照明暗めの方が落ち着くな」と思えば「分かったうえで」暗くしたっていいのです。)
住みながらある程度調整していくことも考慮しつつ照明計画を行いましょう。
次回の照明特集(1月コラム)では「部屋別の計画ポイント」をご紹介いたします。
OGスタッフOG staff
日常の「めんどくさい」を撃退すべく、心と身体が快適に生活できる方法を日々研究中の一級建築士(ハンズワタベOG)。お片付けマニアで「家を整えること」「楽できる方法」を考えるのが大好き。小児喘息の経験から片付けやすく掃除しやすい部屋作りを得意としている。
〈資格〉一級建築士、インテリアコーディネーター、整理収納アドバイザー2級、住宅収納スペシャリスト、ライティングコーディネーター、色彩コーディネーター2級、福祉住環境コーディネーター3級
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