電気料金の値上げについて
東北電力は11月24日、経済産業大臣に、小売規制料金の値上げに係る「特定小売供給約款」の変更を申請しました。つまり値上げの許可を求めたということです。他の電力会社も同様に値上げの申請をするという報道がされております。
つまり、電気料金の値上げです。
ただ、電気料金といっても、使用料や燃料費調整額、再エネ賦課金など様々な費用が複合していて、良く分からないと言われる方が多いように思います。それを住宅会社の目線で少しだけ詳しく書きます。
目次
1.電気料金の構成について
2.プラン別の値上がり状況について
3.値上げの背景
4.値上げはいつから?
5.どのくらい値上げとなるの?
6.私たちが対策できることは?
7.家づくりの際に気を付けること
8.国から補助がでる
電気料金は【基本料金】+【電力量料金】+【燃料費調整額】+【再生可能エネルギー発電促進賦課金】という構成となっています。※代表的な料金プランの場合
基本料金と電力量料金は説明不要だと思いますので割愛します。
・「燃料費調整額」とは
原油、LNG(液化天然ガス)および石炭の燃料価格(実績)の変動に応じて、毎月自動的に電気料金を調整する燃料費調整制度により定められた金額です。飛行機でいうと燃油サーチャージのようなものです。
・「再生可能エネルギー発電促進賦課金」とは
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」により、太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束しており、電力会社が買い取る費用の一部を電気を利用している方から賦課金という形で集め、再生可能エネルギーの導入を支えるものです。太陽光発電設備が無い方も対象です。この制度により、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、より普及が進むという効果が見込まれています。
【従量電灯B以外を契約している方へ】
ご存じかもしれませんが、実はすでに東北電力の大半のプランは12月分より値上げされています。それは「よりそう+ナイト8」といった自由料金プランで、燃料費調整額の上限が撤廃されました。
自由料金プランとは、2016年に電気の小売業への参入が全面自由化されて、我々消費者が電力会社や電力プランを自由に選択できるようになりました。
【燃料費調整額はどのくらい高くなるのか】
ではこの燃料費調整額の上限撤廃でどのくらい価格が高くなるのか。
東北電力によると、12月分の燃料費調整単価が発表されていますので、そちらを参照すると、1kWhあたり9.1円高くなります。仮に1ヵ月あたり450kWh使用している方は、4,095円値上りとなります。ただでさえ物価が高騰しているのに、さすがに4,000円以上の値上がりは痛いですよね。ちなみに、来年1月分は更に上がり、9.94円高くなります。
一方、自由料金プランでは無いものとして、一般家庭では「従量電灯B」という料金プランがあります。この「従量電灯B」に関しては11月の値上げの対象ではなく、燃料費調整額はまだ上限設定が定められています。これは、いくら自由化といっても電気は重要なライフラインであるため、このようなプランが残されているとのことです。
私自身もこの「従量電灯B」に乗り換えようかなと思っていました。
しかし、今回の値上げはこの「従量電灯B」も対象となります。※他にも対象のプランがありますが、一般家庭では少ないので割愛しています。
更に「よりそう+ナイト8」や「よりそう+ファミリーバリュー」などの自由料金プランも2023年4月に単価値上げ予定だそうです。
少しわかりづらいのでまとめると、
「従量電灯B等」は基本料金と電力量単価が上がり、燃料費調整額は据え置き※
「それ以外のプラン」は基本料金と電力量単価が上がり、燃料費調整額も上がる※
※調達燃料費が下がればもちろん燃料費調整額は下がります。
さて、東北電力の発表を要約すると、
電⼒⼩売全⾯⾃由化による販売競争の激化や再生可能エネルギーの普及・拡⼤などに伴う電⼒需給構造の変化、東日本大震災による発電所などの設備被害、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、燃料価格や卸電⼒取引市場の価格高騰・・・といった理由で2年連続赤字となるので止む無く値上げします、というもの。
東北電力だけでなく、電力小売り各社は値上げを発表していますので、安定供給の為には仕方ない。とはいえ、困った問題です。
2023年4月1日から
実は自由料金プランも4月1日から新しいプランの受付がスタートします。
その名は「よりそうプラススマートタイム」。こちらも現行のプランに比べて基本料金が倍近くになります。そして、日中の電気料金は安くなり、深夜電力料金が大幅な値上りとなります。使用形態にもよりますが、現行のプランより値上りとなります。
その時期と同時に現行のプランが申込できなくなります。そのプランは以下のとおり。
「よりそう+ナイト8」
「よりそう+ナイト10」
「よりそう+ナイト12」
「よりそう+ナイトS」
「よりそう+サマーセーブ」
「よりそう+シーズン&タイム」
「従量電灯B」
平均32.94%の値上げ(東北電力発表)
…これすごくないですか?
例えば、50A契約の基本料金1,650円が1,925円に。これは16%アップでまだ許容できるような気がします。
しかし、電力量料金は家庭により違いますが、統計参考にして4人家族の1ヵ月の使用電力量を450kWhとすると、現在は11,181円。値上げ後は17,210円。約54%アップです。
それに加え、送配電設備の利⽤料⾦に該当する「託送料⾦」が⾒直される予定になっておりますので、更に若干上乗せされる可能性があります。
「よりそう+〇〇〇」などの自由料金プラン
料金水準として平均1kWhあたり1.64円(基本料金値上げ分を含む)値上げ
~深夜電力の時間帯のあるプランを契約の方は注意!~
昼間の電力量単価は逆に1.98円値下げですが、夜間は4.95円の値上げとなっています。
夜間に多くの電気を使用する方は値上げ幅が大きくなります!
【料金プラン見直し】
これは意外と有効かもしれません。「よりそうeねっと」会員になりますと、WEB上である程度のシミュレーションができますのでお試しください。
しかし、燃料費調整額という不確定な要素が絡みますので、なかなか難しく正解が分かりません。
【節電対策】
こまめに電源ON、OFF。不要な家電などはコンセントを抜く。
とても大切です。そもそも値上りは関係なく実行しましょう。
ちなみに国が「節電プログラム」を策定しており、東北電力では「冬の節電チャレンジキャンペーン」を開催しています。
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店舗名:(株)ハンズワタベ
店舗コード:fzOWq
【省エネ対策】
これが一番効果が高い方法だと思います。ご提案する方法は、
・家電をより省エネタイプに変更する
もちろん初期投資がかかるので簡単に買い替えとはいきません。そろそろ時期かな、と考えている方は少し前倒ししても良いのでは。
最近注目しているのは洗濯機。特に乾燥機能が付いているもので、ヒーターのタイプにより3倍近くも違いが出ます。最近の家電はどれも省エネなのですが、この洗濯機は違いが出ます。その他の家電詳細はここでは割愛します。
【その他の対策】
暖房をエアコンでしている方向けですが、そもそも代表的な住宅で消費するエネルギーの分類で、より多くの電気を使用するものをランキングすると、
①給湯
②暖房
③家電
④照明
⑤冷房
といわれています。
この①から順に手をつけていくことが効率的かと思います。
・給湯対策として、入浴時間(シャワー時間)を少し短くし、なるべく家族が同じ時間帯に入浴する。
・高効率のエアコンに交換(次の項目で詳しく説明)
新築の際には以下の点に配慮が必要です。
【効率の良い設備機器を採用する】
特に消費電力の高いエアコン、給湯器、他暖房設備についてはグレードにより燃費の差があります。
たとえばリビングエアコンの例では、下の図のようになります。
このとおり、エアコンの寿命を10年としてトータルコストを計算すると倍以上するエアコン代を回収してしまいます。実質6年で元をとりますし、10年以上稼働してくれれば更に差が広がります。また、この電気料金は値上げ前のものですので、それを考慮すると差は更に広がります。※建物の断熱性能などで数値は変わってきます。
【年間38,700円削減で30年では1,161,000円の削減】
また、新築の方は家の断熱性能を高めることで、熱を逃がさずエアコンの消費電力をさらに削減できます。
具体的には、35坪程度の家で試算すると、
・現在の省エネ基準では冷暖房費の電気代は年間86,500円
・断熱性能を省エネ基準の3倍にした場合、冷暖房費の電気代は年間47,800円
※自社での温熱計算にて試算
年間38,700円削減で30年では1,161,000円の削減です。
つまり、性能アップに100万円かけても十分元はとれる計算です。先ほどのエアコン同様、この試算の電気料金は値上げ前のものですので、値上げを加味するとさらに削減効果が高いということが分かると思います。
更にお金だけでなく、高性能にすることで、家の各所での温度差が小さくなり、住み心地が格段に違うことが最も効果的と言えます。エアコンなどの設備機器と違い、あとから変更できないものだからこそ、私たちハンズワタベは住まいを提供する責任として、この部分をしっかり説明していかなければならないと考えています。
今年10月に、電気料金の激変緩和対策を含む「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」が閣議決定されました。それによると、
2023年2月検針分の電気料金から1kWhあたり7円の補助が出ます。10月検針分からは措置が半減されることとなっています。
月450kWhで試算すると3,150円が引かれて電気料金が請求される仕組みです・・・だいたい値上げり額の半額程度。8月までに燃料費が落ち着いてくれることを祈るのみです。
以上、これらの単価などの情報は現在分かっているもので、今後変更となることがあります。ご了承ください。
足立 政士adachi masashi
高校・大学と建築学科を出た生粋の建築バカで一級建築士。リフォーム現場監督に始まり、リフォーム営業、新築現場監督、新築営業、設計・・・ほぼ全ての建築業務を経て早20年。エアコンマニアでもあり「エコな使い方」「必要な容量や性能」などの知識が豊富。3人娘の父。自身は親と同居しており、日々の経験から2世帯住宅の提案に自信あり。
〈資格〉一級建築士、福祉住環境コーディネーター3級、損害保険募集人、一般建築物石綿含有建材調査者
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